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彼と別れたのは戦時中のことだった。
徴兵。私と彼を引き裂いたのは、敗戦濃厚なときであったが、私は涙ながらに彼を見送った。
別れの前夜に私は彼に口付けをし、そのまま抱かれて夜を明かし、彼は私にこれを俺だと思って持っていてくれと彼の写真が収まったロケットを私に渡した。
「生きて帰って来てください。待っています」
受け取った私は涙を流しながら彼に訴えた。
彼は寂しそうな顔で、「待っていてくれ。その写真を私がいるかのように話しかけてくれ。私は、それを考えながら戦地を生き抜こうと思う」と言った。
私は頷き、彼を見送った。
彼が戦地で死んだと知ったのは、その一月後の話だった。
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