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オスカー・ワイルドVS編集長
「なんでこいつだけ1人部屋なの!?」
井上と尾崎が、なんとなくニュアンスで理解したらしく、同時に日本語で絶叫する。
「知らねーよ。身分が違うからじゃないの?いちいち驚くなよ、その程度のことで。明日からは法律学の講義、言葉も文化も違う異国で、法律学を学ぶんだぜ?日本政府が雇ったフランス人教授の講義とは、わけが違う。『ホンモノ』だぞ?こんな貴重な経験ができるのは、オレ様たちだけなんだぜ?」
その瞬間、隣の隣の部屋のドアがバタン!!と勢いよく開き、何やらもみ合いながら、よれよれの白シャツにズボン姿の、かなり長身の男と、背広を着込んでめかし込んではいるものの、明らかに身分の低そうな、下卑た赤ら顔の中年男とが、廊下に転がり出てきた。
『暴力か?なぁ、得意の暴力か?暴力出したらあきませんよと、俺何度も言うたやんか!
原稿料の前借りの何が悪いねん。編集長、人気作家のセンセやったら、もうガンッガン前借り、さしとるやないか!何で俺だとあかんねん。
…あとな、来月号の原稿は、本日の深夜0時までに必ずアゲんで!なぁ。
俺1回もオトしたことないやろ?なぁ?
…いくら編集長の可愛い娘さんかてなぁ、ランコムさん派遣しにかかるのはやめろや!マジで!あの娘、俺に惚れとるようやけど?俺は一切、その気あれへんからな!ええな!
どんっな誘惑かけられても、僕には興味ありませぇーん!!言うたからな!今、言うたからな!』
長身の男は、編集長に絶えず殴られながら、かなり訛りのきいたフランス語でまくし立てる。
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