12人が本棚に入れています
本棚に追加
私は受話器を電話に戻し、妻が寝ている寝室に行く。
「誰からの電話でしたの?」
「美代からで、帰って来られないそうだ」
「雪のせいですか?」
「向こうでも大雪で、飛行機が全て欠航になったとの事だ。
欠航の解除が何時になるか分からんので、来年Uターンラッシュが終わってから、帰ってくると言っていた」
「そうですか…………」
「でも丁度良かったじゃないか。
正月は寂しいかもしれんが、美代が帰って来る頃、千代が、孫達や旦那さんを連れて里帰りしてくるだろうから。
久しぶりに、家族全員が顔を合わせる事が出来るだろう」
「そうですね…………」
千代は高校生のとき海外留学に行き、その留学先で生涯の伴侶を見つけ、学校を中退して嫁いで行った。
美代は北海道の大学で、勉学に励んでいる。
2人の娘は、私達が50近くになって初めて授かった、双子の子供達。
私達はもう70を越えている、20代、30代で子供を授かった親達と違い、子供達と過ごせる月日は、それ程多く残っていない。
それだけに妻が今、寂しく思っている心の内が良く分かる。
ただその事で、今月半ばに罹患し完治が長引いている、風邪が悪化するのも困る。
そう思っていた私の頭に、昼間物置で見つけた物が浮かんだ。
今年の夏、千代が孫達を連れて帰省すると思い買っておいた、花火をである。
「そうそう、さっき物置で花火を見つけたのだ。
冬の花火も乙なもの、花火をやろうじゃないか?」
「雪が降り積もっている今ですか?」
「それも面白いだろ」
最初のコメントを投稿しよう!