第1章

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私は妻が寒くないように、ヒーターと加湿器を最強にして窓際に置き、暖かい服を着せ、縁側に分厚い座布団を置いてその上に座らせる。 「どの花火をやる?」 「じゃ、線香花火を」 「分かった、はい」 妻に線香花火を渡し、その先端に火を点ける。 妻の身体に雪が積もらないように私は、妻の頭上に傘を差し伸べた。 雪降る夜の花火は、雪明かりに灯され、これはこれで風情がある。 妻は線香花火の最後の火種が雪の上に落ちる度、次の線香花火を私にねだった。 「2人が小さかった頃を思い出しますね」 「そうだね…………」 無心に線香花火に没頭していた妻が、ふと顔を上げ、妻の脇で妻の持つ線香花火を、同じように無心で見つめていた私を見上げる。 そして、プッと吹き出した。 「お父さん。 私に傘を差し掛けてくださるのは嬉しいけど、あなたが雪だるまになっていますよ」 「え!?あ! 本当だ」 私は、私の身体に降り積もった雪を払い落とす。 「後ろを向いてくださいな」 妻はそう言い、後ろを向いた私の背中に積もった雪を、払い落としてくれた。 「あ――楽しかった」 「もう良いのかい?」 「ええ。 残っている花火は、子供達が帰って来てからみんなで楽しみましょう」 「そうするか」 妻を、花火を楽しんでいる間、布団乾燥機で温めておいた布団に寝かせる。 「あ――温かい」 「おやすみ」 「おやすみなさい」 妻を寝かせたあと私は、夕食の後片付けをするため台所に向かった。
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