好奇心に身を委ねて

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好奇心に身を委ねて

「近くにおすすめの店があるんだけど、うつらない?」 いきなり提案され戸惑った。 今いる場所はカウンターと複数のテーブルがあるこじんまりとしたバーだ。 もっと二人になれる所に連れてってくれるのかな? 「いいですね!連れて行ってください!」 私がそう言うと彼はお会計を済ませ、私たちは店を出た。 少し酔っているせいか、並んで歩いてると肩や腕が時折触れる。 それはどちらともなくお互い近づいてる気がした。 女は自分がどタイプの男性とHできることは意外と少ない。 お互い印象は悪くないが、何かが邪魔をするのだ。 彼はお酒が入ってもしゃべりすぎることもなく、いつもと変わらぬ様子だった そこは歩いて五分ほどで着いた。 中に入るとウッド調の作りでいかにも女性がすきそうなバーだった。 おしゃれな男女が数人いて店内は落ち着いた雰囲気。 ただ私がどきりとしたのは完全個室に案内されたからだ。 私たちは四人席に二人で座った。向き合う状態で。 私たちは楽しく飲んだが、二人だと話題もつき、たまに沈黙になった。 「今晩彼はどうするつもりなんだろう」 散々読んだ男性心理を書いたネットアプリや雑誌の占いなんかも、現実を目の前にすると頼りないものだ。 私はこうなったら、と思いさっきまで飲んでいた甘いカクテル系を飲み終わるとジントニックを頼んだ。 彼も同じものを頼んだ。 私たちは何度か会社の飲み会で飲んだことがあり、お酒の強さはおそらく同じくらいだ。 私はペースを遅めて飲んだ。 彼は早めのペースで飲み始めた。 すこし酔って緊張が緩んだのか、楽しそうに話し始めた。 「隣こない?」 待ちに待ったおさそい。 少し戸惑うふりをしてとなりにすわる。 肩やひざが当たりそうになる距離。 お互い体を相手に少し向けながら飲んだ。 かれはとなりに誘ってもいきなり触ってきたりなどしない。 むしろ触れないよう一定の距離を保ってる。 わたしはそこもそこらへんの男とはちがい、素晴らしいとおもった。 透き通っていて低さのある男らしい声と金木犀の香りの香水が私を酔わせた。 30センチもない距離で指一本も触れてこないが、彼が意識しているのがつたわる。 まさかこれでもう今日は終わる。 あり得るかも知れない。 そのとき、、、。
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