いずれ来る終わり

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いずれ来る終わり

謎の食事会からしばらく時間が経って、粘りつくように鬱陶しい夏の暑さは地面に吸い付いているようで、秋のはじめだというのに上着を羽織る余地もなかった。 このまま今年も暑いままかと思っていたら10月の半ばで突然の思いつきのように、または地が季節を急に思い出したかのように気温が急降下し、油断して冬支度のできていないこの年は風邪がインフルエンザ並みに大流行した。 僕の住む地方では滅多に降らない雪が狂ったように降りしきり、積雪に慣れていないので事故が多発したり、除雪が間に合わなくて公共交通機関の遅延が頻繁に起こったりした。 それでもなんのかんのと言いながら人は慣れる生き物なわけで、年越し手前にはそういった混乱はニュースで流れなくなった。 年を越して寒さも和らぎ、マフラーをしている人の数がゆっくりと減っていき、すれ違う人たちの服の色が明るくなっていく。 そして僕は相変わらず友達のいないまま、学年がひとつ上がるのを黙って見ていた。 その間、僕と彼女の関係はあまり変わらなかった。 でも、僕の日常には劇的な変化があった。 例の食事会以来、彼女の家に招かれることが度々あった――しかも両家公認で。 うちの母親は子供である僕に対してはあんなだが社会人であることには変わりなく、彼女の母親に対してはそれなりの態度をとっていた。 「なにあれあんたいったいなにしたの?」 友達の話どころか学校生活の話すらしたことがない息子が、急にクラスメイトの女の子とプライベートで親も巻き込んでの交流があると知ったら、この反応は妥当だと思う。 しかしあまり口出しをしないスタンスは変わらず、さらりと僕を詰ることも変わらなかったのは尊敬に値すると思う(皮肉だよ?)。 そうやって何事もなく毎日が過ぎていく。 僕の成績も運動能力もグズなところも変化なく、かといって暴落することなく、全てが今まで通りだった。 その均衡が少しずつ崩れていったのは5年生に上がって少し経った頃、春にしては清々しさはなくかといって夏はまだまだ赤道辺りにいるんじゃないの? ぐらいの頃だ。 僕は少しずつ苛められ始めた。
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