幼馴染みからの手紙

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  「寒いなあ」 ふと、開きっぱなしの窓へと視線をやった。流れ込む外気は冬の訪れを示唆しており息を吐けば空気中の塵や埃と絡まり白い息へと変わる。 手にしていた一通の手紙を机に起き立ち上がる。冷えきった体に鞭を打ち窓に近づく、空を仰げば天高くに星が踊りはらはらと白い粒が星たちの涙のように舞い降りてきた。 「それは寒いはずだ、雪降ってるもん」 外気と同じになった室温を快適なものへと変更する為に窓を閉めて暖房のスイッチを入れる。小学生の頃に買ってもらい高校三年生になった今も大切に使う勉強机の椅子に腰かけた。 机の上には手紙とカレンダー以外に何もなくカレンダーは十二月の二四日を示している。手帳を脇に置いた鞄から取り出して確認、十二月の二四日、俗にいうクリスマスイブの今夜。青春真っ盛りの僕に予定はなく空欄が嘲笑っていた。 今年もひとりぼっちか、情けないやつめ、メリークルシミマス、ぷぷと。 うるさいよ。 ものに八つ当たりしても心の空白は埋まらない、それでも八つ当たりせずにはいられなかった。乱暴に閉めた手帳をベッドに投げて机の上に置かれた一通の手紙へと視線を向けた。 「なんなんだかな、これは」 手紙を手に取る。 封筒には優くんへ、幼馴染みよりと丁寧な字で記入されていた。僕、神田優騎(かんだ ゆうき)には女の子の幼馴染みがいる。 名前は早瀬川佐織(はやせがわ さおり)といい小学校、幼稚園よりも以前。物心が芽生える前から自宅が隣、両親が仲良しで出産日も奇跡的に同日とあり運命だと騒ぎ立てて以来の仲だ。 男と女というより兄妹の感覚に近くいつもそこにいて当たり前、いないならいないで別に気にもならない。 そんな関係だった。
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