幼馴染みからの手紙

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  「んで、どうしたの」 「え、ああ、うん。えっとね」 「座れば、席、隣なんだから」 「あ、あはは。そうだよね、うん」 空気が重たい。 これまで隠し事をしたことはなかった。子供に始めて大声で怒鳴られどうしていいか分からない母親、とでもいうのか。今の彼女は心配と不安が混在して満ち溢れた面持ちでこちらを見る。 僕は不貞腐れご機嫌斜めの子供みたいな顔でそれを見返す。前方の席でまたやってるよ、佐織もあんなのの何処がいいんだか、ねーと女子軍団がひそひそ話をひそひそ出来ない声で発していた。 うるせぇ、ほっとけ。 心底うんざりしながらノートと一緒に引き出しに入れた手を鞄へ伸ばして弁当を取り出す。丁度、頭も働かなくなったきたところだ、飯くって話聞いて適当に仮眠をしよう。 「あ、私もお弁当たーべよっと」 「……」 何にたいしてのあ、なのかはさておき弁当の蓋を開ける。一段目は唐揚げ、卵焼き、爪楊枝にきゅうり、ウズラのたまご、赤ウィンナーが突き刺さったド定番のそれらを眺めはいはい、よくあるやつよくあるやつと無感動のまま机に置く。 二段目、通常は白米やたわらおにぎりが詰められているのだが本日は茶色と黄色のコントラストが映えて白は姿を隠していた。パカッと二段目の蓋を取ると“少年よ、大志を抱け”と謎のメッセージが黄色の炒り卵で綴られていた。 少年よ、大志を抱けの周りを囲む茶色は牛肉ミンチを甘辛く味付けした物でどうやらそぼろ丼らしかった。 「少年よ、大志を抱け、か。いい言葉だね」 同じく弁当を開封しふふふと笑う佐織がいた。帳尻を合わせたように早瀬川家もそぼろ丼に炒り卵でメッセージ、内容は次のコンクールも優勝だ!と書かれていた。 「どーでもいいけど卵の量考えろよな、卵焼き、ウズラのたまご、そぼろ丼の炒り卵。これじゃ大志じゃなくて体脂肪を抱いてしまうわ」 我ながら木枯らしくらい寒いことを言ったと猛省した、あれはないわとこちらを窺う女子軍団の一人が呟く。なんだ、お前らは僕のファンなのか、握手くらいならしてやるぞと心のなかでのみ猛反発。 「大志じゃなくて体脂肪を抱いてしまうって、あはは。やめてよ、はぁー、お腹いたいお腹いたい」 なにがそんなに面白いのかお腹を抱えて佐織は笑う、あまりに笑うものだから視線を集め逆に僕が恥ずかしくなってしまった。
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