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赤色の道
子供の頃から、進行方向の道が二又以上になっている時、片方、あるいは三差路以上ある道の内数本が、真っ赤に見える。
親や兄弟、友達に聞いてもそんなふうに見える人間はいなくて、どうやらこの現象は俺だけに起こっているらしい。
赤く見える道は、進んではいけない道だ。
渋滞に巻き込まれたり思わぬ工事で迂回を余儀なくされたり、ちょっとした接触事故に遭遇したこともあった。
だから赤く見える道には進まない。ずっとそうやって生きてきたけれど、最近、それに逆らいたくて仕方がなくなってきた。
普通に大学にまで進学し、一般的な企業に就職した。その仕事も無難にこなしている。
結婚はまだだが、彼女もその時々でいたりいなかったり。
家族も友達も気安いいい奴らばかり。
平凡だけど、確実に幸せな環境だと思う。でも俺にはこの日常が、とても退屈に感じられるようになってしまったんだ。
危険や困難が待っている。判っているのに、その困難に首を突っ込みたくなってしまっている自分がある。
家を出て最初の四つ角。今日はトラブルが多いらしく、一方向以外、残りの道は総て真っ赤だ。
いつもなら迷わず赤色でない道を選ぶ。でも、今日は…。
進んだ先で何が起こるのか。不安以上に期待を募らせ、俺は、他より一際赤色の濃い道へと足を向けた。
赤色の道…完
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