彼女フってやったぜぇ!~何フッてるのさ。大事にしてたくせに

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 今思えば彼は、厭らしい男だと思う。彼は、ヒロインと二人きりになる度に何度も告白をしたんだから。  ヒロインは品行方正で、ちょっと抜けていて夢見がちな女の子ってのが相場だ。  だからいじめっ子6人を”僕”が潰した事が噂になってない事で、まだいじめられっ子の烙印が押されている弱腰優から告白を受けても、驚きこそすれ嫌がりはしなかった。 「ゲームでいえばさ、基本的に3年生くらいで誰か一人と付き合うか、早めに色んな所でフラグを立てて総攫いする。なんにしても半年はゲーム時間でかかる訳じゃん?男どもがちょっと良いかもとヒロイン気にしだしても、結局最後の決め手を打つまで時間がかかる、ならちょっとばかし揺さぶってみるのもありだろう?」  彼の言葉を聞いたときに僕は呆れてしまった。彼25年も生きてきたんだよ? 大人としてのずるさでなくて、姑息って言葉が頭に浮かんでしまったくらい。 「あのなぁ、そっちの世界の元”俺”の顔はなかなか悪くないだろ?自分で言っちゃなんだがイケメンフェイスだ。性格はお世辞にも良いとは言えないがそんな優秀ハードにイケメンマインドを持ったソフトウェア、つまりお前が搭載されれば鬼に金棒だよ。俺なんか見ろ。元”お前”の体はフツメン。フツメンハードに自信家ソフト入れただけだ。要は、不利だろ?攻略対象に対して」  何かは分からないけど、その時は非常に腹立たしかった。  そんなことを言っていた彼は縦横無尽にゲームを走り回っていた。隙があればヒロインにアプローチ。  このゲームの攻略対象は7人。でも赤城がやられてからは6人。  横暴で目的の為には手段を選ばない生徒会長の白崎春人  成績優秀でクールな性格から影のある王子と人気のある紫城錬  ヒロインの幼馴染で顔も成績も性格も3拍子スペックがそろった風祭雄太  スポーツ万能で俺様気質な黄ノ下剛健  本当は高い能力を持っているのに自信がない為、信じてくれたヒロインに対して好意を持つ一学年下の桃瀬愁  そして隠れキャラといわれる黒水恭介。  どれも僕から見れば皆かっこよくて勝ち組といわれるスペックを持った人ばかりだ。  だけど… 「お願いです。もう勘弁してください」  ある日の夢の中で僕は見てしまった、優君の記憶の中で、生徒会長、白崎春人が土下座する所を。
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