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「あぁゴメン!何というか君と付き合うって箔が欲しかっただけで本当は好きじゃな…」
その言葉が終わるか終らないかと言う所で辺りに響く破裂音。
「嫌い!大っ嫌い!!」
平手打ちを放ち、振り切った姿勢のままでいる女の子の真っ赤染めた怒りの様相と目に浮かべる涙を見れば、どれだけ彼に本気だったのか良くわかった。そしてもう何も言わずにその場から走り去って行った。
少しだけずるいと思ったのは、この娘はとても可愛くて、だからどんな顔をしていても可愛いのは変わらない事だろうか?
僕は、彼には同情しないよ。彼はとてもバカな男だからね。
それに、彼にとっての彼女は、このゲームで幾多数あるエンディングに、新たな選択肢を生み出す為の存在にすぎなかった。
自分の楽しみのため、このゲームの世界を壊してしまう男、ゲームのバグともいえる存在だ。
『さて!ゲームも終わり、今度こそ良い人生を送るぞぉ~』
まるで吹っ切れたように背筋を伸ばす目の前の彼の正体を僕は知っている。
だけど僕は何もするつもりはないし、何か出来る事もない。
だってこれは彼、”弱腰優”な”色条タケル”が今日起きた光景を、僕、”色条タケル”な”弱腰優”の夢の中で見せてくれるものなのだから。
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