彼女フってやったぜぇ!~何フッてるのさ。大事にしてたくせに

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 僕達が命を落とした理由は今考えれば、彼だけがしょぼい。  彼、前の色条タケルはバイトのしすぎで疲れ切っていて、警備員のバイト中に足を滑らせて机の角でオダブツ。僕、前の弱腰優はクラスメートからのいじめを苦に命を落とした。  そうして、何もない無の世界での邂逅したのが、彼の魂だった。  死後の世界があるなんてこの時まで思わなかったけど、彼の魂が猛々しく、荒々しく光っていたのは覚えている。  彼が失礼な男だというのはその後すぐに分かった。 「お前、死ぬの早ぇよ。高校こそクラスが固まっちまうから逃げ場ないかもしれねぇけど、大学は好きな奴とつるめるし、仕事だってバイトだって好きな物につけば意外と話しの合う奴が見つかって結構人生楽しいんだぜ!」  お互いの死んだ理由を打ち明けた時に彼が見せた呆れた顔と、そんなセリフを吐いてきたからだった。そんなこと、あんな小さな世界しか知らない僕にはわかるはずがないし、仮にそうだったとしても、確証が持てない僕にとっては腹の立つ話でもあったよ。  でも悪い人でもない事も分かった。 『まぁ、楽しいことばっかしていたから今、こうなってるんだけど! あぁ! 享年+1歳で26歳? 勿体ない事したぁ』  とても正直な人だったし、反省もできる人だった。あとは、こう言ってはいけないかもしれないけど、彼が苦々しげに呟いて見せた悩んだ顔を見た時に僕はチョット嬉しかったのを覚えている。  特に何もしていないけど、さっきの失礼なセリフにやり返す事ができたような。  なんでかな? その時僕の中で一つの考えが浮かんだんだ。  もし、適うのならばお互いの世界を交換しようって。  
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