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僕が自分自身がゲームの世界の存在であった事を知ったのは、実はこの事がきっかけにもなった。
この喧嘩で驚いたことは2つ。
彼、つまり今の僕のこの世界の家族に会いに行った時、お姉さんがドハマリをしている乙女ゲームのパッケージをみて、僕がいた世界がゲームの世界だったことに驚いたこと。
そして僕をいじめていたリーダー格、”赤城夏炎” は可愛い主人公ヒロインにとって攻略対象の一人だった事。
まぁ、優君にやられた怪我が完治して、学校で初めて彼がヒロインと会ったのが1年目の11月、ゲーム的にも、季節的にもイベントも何もないよね。
赤城ルートの1stコンタクトイベントの時期なんてとっくに過ぎている事も考えれば、この時点で攻略キャラもへったくれもない。それに酷い後遺症を残すことになったようだよ? で、僕に転生した優君はおとがめなし。僕はいじめられっ子だ。だから誰も僕が彼を潰したなんて信じなかった。
さて、次の話をしよう。僕の学校は私立だ、でも前の僕には両親がいなかった。一人暮らし。
学校は奨学金で行っていた。勉強、大変だったなぁ。で、彼は何をしてくれたと思う?
彼は現実世界で培った経験を生かしてネットビジネスを始めた。バイトも始めた。それで稼いだお金で学費を払い始めたんだ。
「弱みを作りたくなくてな」
彼は夢の中でそう言ってのけた。普通奨学金なんて弱みに思う人いる?
ただ、それを弱みだと思わせた原因は僕にある事は否定しない。彼に言ってしまったんだから、ここは”乙女ゲームの世界”だと。
「乙女ゲームねぇ。要は一人のヒロインに男達が群がるって話だろ?」
彼は、自由な人間だ、束縛や理を基本的に嫌がる。ついに、思いついてしまった。
「なぁタケル(前優、以下タケル)、7人の男、一人の女を愛す。各キャラに恋人エンドや友達エンド、バッドエンド、ハーレムエンドがあるとすると大体22通りか?そこにもう一つ結末を加えたら面白いと思わないか?』
彼は僕の体で、僕が囚われていたゲーム世界でも自由を謳歌しようと考えた。
それは、彼がヒロインを手に入れて、そこに23個目のエンディングを作ろうとしたこと。
だから弱みを見せたくなかったんだ。この学校の理事長の孫で、ヒロインにとって攻略対象である生徒会長に。
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