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ボクの彼女のヒカリさんはロックバンドのヴォーカルをしている。
バンド仲間と話すときは男性口調で口が悪い……と思う。
でもボクには優しくて丁寧な口調で話してくれる。
まだ慣れない手話と口を動かして。
「一緒に、住もう。」
会ってすぐ言われたのがこの一言。
こくん、とボクは頷いた。
断る理由なんてなかった。
ボクはずっとステージで歌うヒカリさんを見ていたから。
ライヴハウスの壁際スピーカー前にいつも陣取って、ヒカリさんをじっと見つめ、鳴り響いているであろう音と声に【振動】で感じていた。
ライヴが近くなるとヒカリさんは昼から夜中までずっとスタジオに引きこもる。
『おかえり』 『おやすみ』
ボクが仕事から帰ると、夕飯と共に置き手紙がある。
これがあるから、ボクは安心してベッドに入ることができる。
『おかえり』 『おやすみ』
置き手紙にそう返事を書いてボクは眠る。
それを見て、ヒカリさんがボクの隣でぐっすり眠れるといいな。
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