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気付いた時には病室のベッドの上、何本もの管が体に刺さっている。
唯一動かせる眼球で周りを見ると、妻や子供、孫達が私を囲んでいた。
皺くちゃになった妻の顔からは涙が流れている。
「あなた……
お疲れ様でした。
もう……ゆっくり休んで下さい」
妻は零れる涙をハンカチで拭いながら、
「おやすみなさい」
笑顔で魔法の言葉をかけてくれた。
やはり魔法の言葉は凄い。
幸せだけでなく、感謝の気持ちや哀しみの深さまで伝わり、
「あ、あなた……」
「お父さん!」
最期の力まで与えてくれて、私は自分で酸素マスクを外し、
「おやすみ……」
静かに、静かに瞼を閉じた。
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