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「夢見、俺はもしかしたらお前とは仲良くできないかもしれない」
着席した相馬が小さく、そう零す。
「やだなぁ、そんなに怒らないでよ。
あと二年も一緒の学科にいるんだから、ね?」
夢見が小声で謝ってくるが、相馬は依然冷たい視線を浴びせ続ける。
……俺はこの学級でやっていけるのか。不安が募るばかりだ。
彼の目がだんだんと遠くになっていくのに気がついたものは、その場には誰一人としていなかった。
ーーー。
「はーい、自己紹介も終わったことですし、授業を始めますよー。
授業って言っても、最初の方は一年生の頃の軽い復習なんだけどね」
ようやく自己紹介が終わり、すぐさま授業へと移る。
復習というのは、
・剣聖や魔導士が何を目的として育成されているのか。
・剣聖と魔道士の違い。
・現在、魔導士に認められている仕事。
の、主に三つについてだ。
これは一年生の四月と五月で叩き込まれる重要な基礎とも言える項目である。
「では早速……。
剣聖育成科と魔導士育成科の存在理由を答えてもらいます。
じゃあ最初に自己紹介をした真姫 玲奈(まき れいな)さん、行っちゃってください!」
ビシッ、という音がとても似合いそうな構えで指名された真姫ーー一番右で一番前の席、つまり、現状Aクラスでトップの成績を持つ少女ーーがゆっくりと立ち上がる。
立ち上がる途中、一瞬だけ真姫に睨まれたような感覚を相馬は覚えたが、顔も名前もさっき知ったばかりの少女からそんなことをされる覚えもないので、気のせいだろうと思うことにした。
「剣聖と魔導士の育成が主な目的とされています。
剣聖や魔導士の存在意義として、一つが軍事力の確保です。
日本は戦争を禁止しているので、軍事力といっても自衛隊の戦力増強となりますが。
二つ目が、他国への密偵です。
これが利用されることになってから世界の防衛システムの性能が格段に良くなったとのデータもあります。
そして最後に、魂の具現化という革命的な技術が発見されてから突如現れた、異次元空間穴(ワームホール)の探索です。
去年はこれへの遠征で重傷を負ったマヌケもいたようですが」
再度、相馬の方へ目線を向け、締めくくる。
なるほど、睨まれていると思ったのは気のせいじゃなかった。
しかも睨まれている理由がそれだったとなれば納得できる。
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