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あの時の事は、相馬が異次元空間穴通過後に独断行動をし、勝手に重傷を負ったーーということになっている。一般生徒には秘匿されていたはずだが、どうやって彼女は知ったのか。
それにその時にとった行動は本来、相手が人間であれば賞賛されるべきものであったのだ。不満の一つや二つ出てきそうなものだが、彼自身それに該当するものは一切感じていないという。
突如、教室内に微妙な空気が流れだす。
「……は、はい、ありがとうございました真姫さん。
今全部言われちゃったので私から話すことってあんまりないんですけど……。
あ、なら異次元空間穴の説明をしちゃいましょう!
これは先生が説明しますね」
教師としての面目を保つためか、雰囲気を察してのことか急に調子を変えて自ら説明し出す宮部先生。
露骨すぎて生徒全員が苦笑い気味である。
不意に相馬が真姫へ目を向けると、すぐに目が合った。
目が合ったというよりかは、一方的に睨まれていた。
すぐに顔を背けられ、結局彼女がなぜーーヘマをした人間というだけであんなに睨んでくるとは思えないーー睨んでいたのか、勘付くことは叶わなかったが。
「異次元空間穴とは、要するに世界を越える穴です。
全ての穴から行ける世界はバラバラで、国や地域によって異なるとなっています。
ちなみにこの学校から一番近い異次元空間穴は、何年前に出来たものか、ちゃんと覚えてる人いますかー?」
「はいはーい、二年前の2187年でーす!」
後方から飛ぶロミオの声。思ったよりもそれは大きく、先生も驚いたのか、目を丸くしている。
「せ、正解です。よく覚えてましたね、えーと、大岩 堅次郎君。
では説明を続けます。
あの異次元空間穴から行けるのは、一世紀半ほど前に衰退した本のカテゴリーにある、『ファンタジー世界』というところです」
「褒められ……先生から褒められた、俺ッ……!」
真面目に話を聞け。
そんな意図を込めてひじを軽くロミオの机の角にぶつける。
「もうちょっと真面目に聞いておけ。
先生から汚物を見るような目で見られたくないだろ?」
「そ、それもそうだな、悪かった」
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