剣と魔法

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剣には、様々な形のものが存在する。 ゲームに出てくるようなロングソードやダガー。日本で言えば、刀もその一種だ。 ある西洋国では細剣が製造され、またある国では槍が作られたが、長さや素材、実践用が訓練用かなどの要素を合わせて考えるとキリがない。 このように、剣の形状は国や歴史によって大きく違っている。 にもかかわらず、それを手にし、振り、敵陣へと切り込んでいく彼ら『剣士』達は皆一様に、口を揃えてこう語る。 ーー「剣は我らが魂であり、命よりも重いものだ」と。 きっと彼らは物質的な重量について話していたわけではもちろんないはずだ。 ただ、それほどの気持ちと覚悟を持って剣と向かい合え、と言いたかったのだろう。 だがその言葉は、時が進み現実のものとなった。 西暦2110年にイギリスのある研究チームが、魂の具現化に成功したと公に公表した。 しかし具現化には条件があり、現状、全世界の人類が行える訳では無いとのことだった。 そして日本は、その具現化が可能な人類の一つであり、発見したイギリスをも凌ぐ急成長を見せているのだ。 そのため日本では、各高校に普通科、商業科、スポーツ科などと並んで、新しく学科が設置された。 名称は、『剣聖育成科』。 ほとんどの生徒がこの学科を目指して入学してくる。 が、その中でもほんのひと握りの者たちしか最後まで学科を続けることが出来ない。他のものは覚悟していたよりも何十倍も厳しい現実に耐えきれず、押しつぶされてしまう。 そのために用意された特別な措置が、教員に学科変更の旨を伝え、その学科に見合った能力を備えていれば学科変更が許される『途中学科変更』、通称『リタイア』だ。 リタイアと呼ばれるのはその意味通り、途中で学科を諦めることからそう言われるようになった。
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