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帰りも一緒に行こうと二人は約束してから、お互いの教室へと向かっていった。
ーーー。
「えーそれでは。
今日からこの『魔導士育成科』二年A組の担任をすることになった、宮部 舞麗(みやべ まり)です。
と言っても、去年から顔を知ってる人が大半だと思いますけど……」
教卓の前で自己紹介を始めたこの女性が、どうやらクラス担任らしい。
メガネ、スーツ、顔立ち、見た目。
一通り見て誰もが最初に出てくるイメージはきっと『厳格な女教師』なのだろう。
でも本人は気さくに接して欲しいらしく、自分の理想の女教師を求めたらこうなってしまったらしい。迷子にも程がある。
そんな彼女が『去年から』と言った通り、一年も経たずして魔導科は今の二年生だけで既に七クラスを超えて、八クラスになっていた。
初めから魔導科に所属している者も大勢いたのだが、それでも確か三クラス程度だったと相馬兄は記憶してーー
「やっぱりすげぇ綺麗だなぁ……俺魔導科に転入して良かった。
お前はそう思わないか、相馬?」
ーー失礼、相馬(そうま)は記憶していた。
今話しかけてきた後ろの席の男子生徒は大岩 堅次郎(おおいわ けんじろう)と言い、彼も学科変更をしてきた一人だ。
成績は優秀。
広い肩幅、制服の上からでもわかる筋肉。そんな外見からもわかるように剣聖としても申し分ないほどの実力を持っていたのだが、なぜそんな男が学科変更をしたかといえば。
「そうだな。俺も何度か見かけてことがあったが、なるほど、堅次郎が見惚れるわけだ」
「だろ!?いやー、相馬はわかってくれると思ってたぜ!」
後ろから平手で相馬の背中をバシバシと叩く。傍から見ると結構痛そうに思えるが、堅次郎が緩めにしているのか、相馬が叩かれ慣れてしまったのか、実際にはあまり痛くないとのことだ。
そう、堅次郎は彼女ーー宮部 舞麗に一目惚れして魔導科に転入したのだ。
その姿は愛しき恋人を求めるロミオか。
はたまたただのアホなのか。
周囲は後者の評価を下したが、本人はあまり気にしていない様子なので、魔導科の皆もそのことに関してはほとんど話題に出さないようにしている。
子も子なら親も親で、剣聖科から魔導科に転入したことを執拗には咎めなかったと聞いた。
父親は「男なら仕方が無い」と、母親はそれを聞いて呆れ半分諦め半分で認めたと堅次郎が笑い飛ばしながら前に語ってくれたことがある。
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