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「まーたバカみたいな会話して。
ちょっとは黙って先生の話聞きなさいよ」
今度は相馬の右の席の女子生徒が、二人の会話を止めようと割り込んでくる。
「騒がしかったか、すまない。
ところで、君の名前は?
俺は今日魔導科になったばかりだから、ほとんどの人の名前を知らないんだ」
それを聞いて女子生徒は納得した表情の後で、面白そうなものを見つけたかのように笑みを浮かべた。
「へぇ、あまり見たことない顔だと思ったら、アンタが転入生だったんだ。
剣聖科から来た神崎 相馬(かんざき そうま)君だよね?
アタシは辻 夢見(つじ ゆめみ)って言うの。よろしくね、相馬君」
「辻 夢見か……。
よろしく、辻さん」
「ゆ、め、み!辻さんって呼ばれるのあまり好きじゃないの」
「そ、そうか、わかった。
これからよろしく、夢見」
聞き届けると夢見は、相馬にパチッとウィンクをしてすぐに舞麗先生の方へと向き直る。
「辻が自分から男に話しかけに行くなんて珍しいな。気に入られでもしたんじゃないのか、相馬?」
「そうだと嬉しいんだがな。
新しい環境でできた最初の人間が敵だなんて思いたくもないよ」
堅次郎が夢見に聞こえないように小声で相馬に話しかける。
相馬が本心でそう答えた直後、
「夢見だって言ってるでしょ、聞こえなかった!?
ケン、アンタアタシに喧嘩売ってるの!?」
夢見は机を手で強く打ち付け、自分の椅子を蹴飛ばして鋭くそう叫んだ。
「いちいち怒ることはねぇだろ!
毎度毎度なんでそんな噛み付いてくんだよ!」
「アンタこそ毎回毎回わざとやってんの、それ!?
もしそうだったらぶっ飛ばすわよ!」
突然の出来事で相馬は呆気にとられていたが、この学級では日常となっているのか、周りを見ればほとんど(相馬のように今日から魔導科入りの生徒を除く)がやれやれと頭を振ったりため息をついたりしていた。
その中には舞麗先生も混じっていて、一つ息を吐き出した後、女性の出す声とは思えない低い音が、静かに、教室内に浸透した。
「そろそろ止めんか、アァ?」
しん、とーーーー。
このクラスに転入してきたばかりの人にとってはそれはとてつもなく衝撃的だっただろう。
「「……すみませんでした」」
「よろしい。なら自己紹介を始めましょう。
新しく来た子も少なからずいるわけですし。
じゃあ~、そこの席からお願いね」
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