第一話 暗殺者の来訪

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重々しい色の雲で覆われた空、満月が半身だけ姿を見せている。 「窓の立て付けが悪いな、明日にでも直させるか」 風が窓を絶え間なくノックする音で彼は眠りを邪魔されていた。 「誰か来たぞ」 警戒を促す声が枕元から聞こえる。 テラスへと続く窓がいつの間にか開いている。そこに黒装束の人影。 身長、体格から男だと予想される。 「誰だ!」 ベッドに寝ていた彼が体をおこす。 ――この距離まで気配を悟らせずに近づくとは……。 「…………」 黒装束の男は答える気がないようだ。 彼は枕元に備えてある短剣をそっと取り出した。 「ここを王子の寝室と知っての愚行か?」 顔が布で隠されているため敵の表情が読めない。 「衛兵ーっ! 入ってこい! ――衛兵!」 王子は部屋の外に向かって叫ぶ。 石造りの部屋である、壁は厚く少々大きな声を出しても周囲の部屋には届かない。 ――部屋の前には常に二名待機しているはずだ、なぜ反応がない。 「まさか他にも仲間がいるのか」
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