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重々しい色の雲で覆われた空、満月が半身だけ姿を見せている。
「窓の立て付けが悪いな、明日にでも直させるか」
風が窓を絶え間なくノックする音で彼は眠りを邪魔されていた。
「誰か来たぞ」
警戒を促す声が枕元から聞こえる。
テラスへと続く窓がいつの間にか開いている。そこに黒装束の人影。
身長、体格から男だと予想される。
「誰だ!」
ベッドに寝ていた彼が体をおこす。
――この距離まで気配を悟らせずに近づくとは……。
「…………」
黒装束の男は答える気がないようだ。
彼は枕元に備えてある短剣をそっと取り出した。
「ここを王子の寝室と知っての愚行か?」
顔が布で隠されているため敵の表情が読めない。
「衛兵ーっ! 入ってこい! ――衛兵!」
王子は部屋の外に向かって叫ぶ。
石造りの部屋である、壁は厚く少々大きな声を出しても周囲の部屋には届かない。
――部屋の前には常に二名待機しているはずだ、なぜ反応がない。
「まさか他にも仲間がいるのか」
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