第一話 暗殺者の来訪

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「人の気配がしないのう、既に殺されたか……」、剣が呟いた。 枕元で敵の襲撃を知らせたのが、いま王子の手に握られている短剣だ。 知性を持つ剣、彼は爺と呼んでいるが年齢は不明、爺の話では三百年は生きているらしい。 姿は黒く肉厚の短剣だが、彼の剣の師である。 「目的は何だ、金か、命か?」 敵は腰から剣をゆらりと抜き、王子の疑問に無言で答えた。 「命……か、誰の差し金だ」 敵が剣を振り上げ、王子に飛びかかってくる。 テラスの入り口からベッドの枕元まで、ゆうに七メートルはある。 それを敵は軽々と飛び、枕へ剣を突き刺した。 王子は敵の攻撃を紙一重で回避し、横転しながらベッド下へ転がり落ちた。 すぐ立ち上がり防御の姿勢を取る。 「人のベッドに土足で上がりやがって」 敵がベッドから降り王子を追撃。 身長差を利用し頭上から剣を加速させ、速度と重量で彼を両断しようと攻撃する。 「大の大人が子供に本気になるなよ」 ――攻撃が重いんだよ、クソッ、手が……痺れてきた。 金属が衝突する高い音が静かな部屋に幾度となく響く。 王子は迫る剣の腹を横から打ち落とし、剣先の軌道をなんとか逸らせていた。 しかし剣圧でじりじりと後退させられる。 「うぐっ」 剣ではなく足での下段攻撃。剣の攻撃に神経を尖らせていた王子は隙を突かれた。 彼は横腹を蹴られ窓際まで飛ばされる。 「ゲホッ、ゲホッ」、 ――くそっ油断した。足技ありなら先に言え。 蹴られた腹を押さえながら彼が立ち上がる。 ほぼ部屋の対角線上を蹴り飛ばされた、あばら骨が折れていても不思議ではない衝撃だ。 敵は王子に休む暇を与えない。ゆっくりと静かに間合いを詰める。
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