2人が本棚に入れています
本棚に追加
「はっはっは、がんばれガット」
「ほら、お弁当持ってきたから食べなさい」
「おー、サンキュー。ちょうど腹が減ってたところなんだ」
「食ってやるよ」
「またそんな言いかたして。無理に食べないでいいわよ」
「いや、まあ……、お腹減った……な」
「最初からそう言えばいいのよ、腹を空かせた野良猫さん、髪が黒いから黒猫かな」
「ちっ」
ハスエルのサンドイッチを大口でかぶりついているケインが、
「ハスエルは料理上達したなー」
「でしょ、毎日やってるからねー」
「ああ、村長も俺も助かってる」、ガットがギリギリ聞こえるぐらいの声で呟く。
「やけに素直ね」
「俺ら料理できないからね。男二人の生活だとどうしても……」
「ガットが素直だと気味悪いな」
「そうよねー」
「もういいよ」
ガットは村長の家でお世話になっている。
村長はもともと一人暮らしだったので、今はガットと男二人の生活だ。
ハスエルは彼が転がり込む前から村長の世話をしていたので、ガットのために食事を運んでいるわけではない。
「ガット、その仮面――外さないね」、少し心配そうな表情でガットを見るハスエル。
「まあ、ね……」
彼がこの村に来る途中で盗んだ品だ。
白銀製の仮面で目だけ覆われており、鼻と口は露出している。
目の部分にはカラーのレンズがはめ込まれ、外から目の色は判断できなかった。
「前に聞いたときは酷いキズって――私なら治癒魔法で治せるよ?」
「これは、このままでいいよ。戒めみたいなものさ」
「そう? ならいいけど。必要なら言ってね」
「ああ」
「今さら素顔を見せられて、美少年でしたとか、俺困るわ」、苦笑いするケイン。
「何に困るって言うんだよ」
「え、いやぁ、まぁ、なんだ――」、弱いところを突かれ、しどろもどろになる。
「ぷっ、ふふふ、はっはっはっ」
ガットは薄々感づいていた。彼がハスエルに好意を抱いていることを。
そして、幼馴染みの間に突然沸いたガットを意識していることも。
「なんだよ……」
最初のコメントを投稿しよう!