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シオンは他の神々と共に思うがままに暮らした。
長い時間の中で、彼らの間に自然に序列が出来上がり、シオンは当然のごとくその頂点にいた。
神々はまた、神と人との中間のような者も作った。
人はそれを天女とか妖精とか呼んでいたが、神々にとってはただの僕に過ぎなかった。
概して悪戯を好む質を持っていたが、さしたる益も害も為さぬ存在ではあった。
大抵は美しい人の姿をしており、とくに使命を持つ者のほかは神々の山に住まわされた。
・・・・・・・・・・
「ジュラ、遊びに行く。」
シオンが天女の中でも一際美しい女の姿をもったジュラを呼ぶ。
「はい。」
ジュラは嬉しげに返事をして、主と慕うシオンの前に跪いた。
憧憬に満ちた眼差しを彼に向ける。
漆黒の髪、象牙の肌、闇よりも深く冷たい光を帯びた瞳、自分にこの上ない快楽を与えてくれる気紛れな主の逞しい身体は、夜の色の衣に隠され一見すんなりと華奢にも感じられる。
「シオン様、人に悪戯をして楽しみますの?」
「さてな…。ただ退屈なだけだ。何か面白いものが見つかるやもしれぬ。」
シオンはジュラを抱き、その瞳を閉じた。
瞬間、微かな風をその場に残し二人の姿は消えた。
この退屈ゆえの気紛れが、この神話の始まりといえるかもしれない…
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