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「…」
ジュラは命じられるまま姿を消した。
人の世界で知った"何か"を内に宿したまま、神界へと戻った。
人はそれを"嫉妬"と呼ぶだろう。
確かにジュラの内に嫉妬の種子が宿ったのだった。
まだ芽吹いていない種子ではあった…。
女が歩き出す。
シオンは女の行く先を目で追う。
何かを見つけ女は嬉しそうな様子で駆け出した。
「シュテル!」
黄昏の色の髪と灰の色の目をした男が女の向かう先に立っていた。
「ミュセル!」
男と女は抱き合い口づけを交わす。
"ミュセルという名か…"
シオンは女の名を知った。
二人のそばに立つ。
やはり女は美しくシオンの目を奪う。
"…だが、気に入らぬな…"
シオンは、ミュセルを抱きその髪に触れている男を、冷酷な目で一瞥した。
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