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ボクは、その日。
桜雨ならず、桜涙を見た。
花霞で、空は淡いブルーだった。
校庭の敷地内には、桜が群生しているところがある。校舎裏だ。
ボクはこの昼休み、昼寝をしようと、校舎裏へ、向かうところだった。
――雨?
ボクの頬に冷たいものが触れた。
天を見上げても、雲ひとつない天気。
――その時、ボクの目に、ひとつの影がかすった。
黒くて、腰まである長い髪を、風に揺らされながら、彼女は――泣いていた。
どこまでも高く清い桜の木々を仰ぎながら。彼女は、泣いていた。流した涙はそのままに。
風に乗って、ボクの頬まで運ばれてきたんだ。
ボクは。
その姿に見とれていた。
こんなにもキレイに涙を流す人を、初めて見た――。
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