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「おめでとう」という言葉ではなく、この舌打ち。グサリと真琴の胸に突き刺さったが、それでも、ここでめげてはいられない。
真琴は気を取り直して、
「……それで…あの…あなたは…?」
と、尋ねてみる。
「ああ…、私は古庄晶(あきら)。和彦は私の弟だ」
――…やっぱり…!
古庄のように完璧な相貌の人間は、この世に二人とはいないと思うけれど、兄弟だったのならば、その現象もあり得るだろう。
――お姉さんがいるって聞いてた気がするけど、…お兄さんもいたのね…。
「改めまして、よろしくお願いいたします。今日は、和彦さんは部活の試合があって来れなかったので、私一人でご挨拶に上がりました」
真面目な真琴らしい、礼儀正しいお辞儀を深々とする。
「ふうん…」
という相づちが聞こえ、真琴が顔を上げると、晶の顔がほのかに笑っていた。
秋の優しい日射しを受けて、輝くような晶の絶妙な美しさに、真琴の心臓が跳ね上がる。自分の顔が熱を持って、赤くなっていくのが分かった。
別に、晶のことが異性として気になる…というのではなく、さすがに古庄の兄弟、一瞬で人を惹きつける魅力がある。しかも晶のそれは、古庄のそれに加え、柔らかい物腰と何とも言えない〝色気〟があった。
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