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「それじゃ、まだここの仕事は時間がかかるから、一旦君を私の家まで連れて行くよ」
晶からそう言ってもらえたが、真琴は首を横に振った。
「いいえ、お仕事のお邪魔をしては申し訳ないので、お家の場所を教えてくだされば、歩いて行きます」
「歩いて行くって…、まだずいぶんあるよ?駅からここまでの2倍くらいはある」
「……えっ!?」
それを聞いて、真琴は絶句した。
この先は山しかないように思われるのだが、そこをあと2時間歩くなんて、気が遠くなりそうだった。
「ここからは山道になって寂しくなるし、車で行った方がいい。…可愛い義妹に、何かあっちゃいけないし」
――…か、可愛い、『義妹』…!
真琴はもう沸点に達してしまって、顔から湯気が立ち上らんばかりに真っ赤になった。
わなわなと力が抜け、返す言葉も見つけられず、言われるがままに晶が運転する軽トラの助手席へと乗り込んだ。
そこから晶の言うように、木々の間を抜ける林道を通って車は進んだ。
目に映る木々の緑は、とても優しく癒されるけれども、車…しかも軽トラという狭い空間の中で、晶と二人きりになるということは、真琴に多大な緊張を強いた。
その緊張もあって身構えてしまい、真琴の体だけでなく言葉の反応もぎこちなくなる。これは、出会ったばかりの頃の古庄に対する感覚と似ている。
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