義父と義母

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林道を抜けて、再び田畑の広がる場所に出て、見えてきたのは大きな茅葺の屋敷。 晶の運転する軽トラは、細い小路を上って、同じく茅葺の大きな門をくぐり、その前庭に駐車した。 ともかく何とか、真琴は古庄の実家まで辿り着くことができたようだ。 軽トラを降り立って、真琴はその屋敷のあまりの大きさに目を見張る。 「うちの家は、戦国時代は地侍でね。江戸時代はここら一帯の名主をしていたんだ。この家も築300年以上。今どき茅葺なんて不便なんだけど、県の文化財になっているから、勝手にいじれないんだ」 晶が説明してくれるのを聞いて、真琴はますます驚き入って声も出なかった。 古庄の生育環境は、真琴が何となく思い描いていたものとは、遠くかけ離れているらしい…。 玄関を入ると大きな土間があり、空気はひんやりとしていた。見上げると天井は高く、何本もの梁がむき出しになっており、茅葺屋根の裏側が見えた。 晶が奥へ向かって大声を張り上げる。 「おーい!父さん、母さん。和彦の嫁さんが来てるよー」 しばらくして、奥の方から物音がし、「えぇ?!」と言うような不審がる声も聞こえてくる。 「…和彦の嫁さんって…?」 「あの結婚は、破談になったんじゃ…?」
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