義父と義母

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この舌打ちに、真琴の心は再びズキンとし衝撃を受ける。静香に比べて劣ってしまう自分が、嫁として歓迎されていないように感じて、いたたまれなくなった。 しかし、そんな父親も一瞬後には笑顔になる。 「真琴ちゃん。遠い所をよく来たね!さあ、上がって上がって!」 その豹変した態度に、真琴は訳が分からず唖然とし、目をパチパチさせた。さっきの舌打ちは、いったい何だったのだろう…。 「さあ、遠慮しないで。ここは、もうあなたの家みたいなものなんだから」 母親からも促されて、真琴は靴を脱ぎ、高い段差を上がって畳に足を付けた。 「それじゃ、私は田んぼに戻るから。…ゆっくりして行って」 晶はそう言って真琴に極上の笑みをくれると、土間を出て行く。 真琴は晶にお礼を言おうと思ったが、古庄の両親はその猶予も与えず、真琴の腕を引っぱって屋敷の奥へと連れて行った。 見た目も大きな屋敷だけあって、内部もとても広い。縁伝いの廊下を歩きながら、家の中でも迷子になれそうだと真琴は思った。 屋敷の北側にも土間があり、そこには土づくりの竈(かまど)やポンプの付いた井戸があった。その土間から上がった所には、10人以上で囲めるくらいの囲炉裏がある。…さすがは「文化財」になっている住宅だ。
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