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「…真琴ちゃん?」
面食らって固まっている真琴を、両親共に覗き込んだ。
両親どちらも、古庄や先ほどの晶のような、奮い立つような美形ではなく、真琴の目にはあまり似ていないように思われた。
でも、この覗き込む仕草が、同じことをする古庄を思い出させる。やはりこの二人は古庄の両親なのだと、真琴は思わずにはいられなかった。
「あっ!あの、和彦さんは、今日は花園の予選があって…」
「ああ、ラグビーの試合ね」
母親の方が相づちを打つ。
「部員たちの引率してるんです。一旦、家に帰ってから、こちらへ来ると思います」
真琴はそう答えたものの、当然古庄にはここへ来ることは告げていない。しかしその代り、アパートには置手紙をしてきた。
『和彦さんの実家へ、ご挨拶に行ってきます。 真琴』
古庄は、誰もいない暗いアパートに残されたそれを読んで、血相変えてここへ飛んでくるに違いなかった。
それから真琴は、自らいろいろと語るまでもなく、フレンドリーで真琴に興味津々の古庄の両親から、あれこれと質問された。
真琴も教員をしていて、世界史を教えていること。古庄とは今の職場で知り合ったこと。そして、真琴の実家のことなど。
古庄の両親は、古庄や晶のように特殊なオーラを醸すこともなく、真琴も身構えることなく、すぐに打ち解けられた。
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