冒険

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…といっても、古庄の実家は想像していたところよりもずいぶん遠かった。 今海岸線を走っている列車は、真琴の実家にほど近い県庁所在地の駅で一旦降りなければならない。 それから列車を乗り換えて1時間ほど……、再び山あいに向かうのだ。 真琴の知らない古庄をたどる旅――。 それは、ワクワクするような大きな好奇心と、ドキドキする小さな不安とが入り混じって、真琴の気持ちは落ち着かなくなってくる。 小さく揺れながら繰り返される列車の走る音は、止まることのない古庄への想いと同化して、真琴の胸に切なく響いた。 それでも、川沿いを走る鉄道から遠く望める山の稜線、紅葉した谷あいの景色のなんと美しいことだろう。 少年時代の古庄もそれらを見て育ったのかと思うと、真琴にとって今目に映る全てが愛おしく思えた。 古庄の実家のある最寄りの駅へと到着した。 早朝に古庄を送り出して、自分もすぐにアパートを出てきたのに、もうお昼になっている。 乗り降りしたのは、真琴を含めて3人ほど。 他の2人と同じように無人駅の駅舎を出て……、 「……ウソ……」 真琴は絶句し、いきなり途方に暮れた。 駅の周りに、本当に何もない。山と畑の真ん中に、ポツンと駅があるだけだ。 ここからタクシーにでも乗って、古庄の実家にまで行こうと思っていたのに、車の影さえ見えない。
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