冒険

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    ――それとも、和彦さん…。もしかして知られたくないこととかあるのかな…? 真琴には秘密にしておきたい過去があるのかもしれない。 それでなくても、古庄は実家に行くことどころか、極力実家の話をしたがらない。実家に何か、特殊な事情などがあるのだろうか? 〝結婚〟したことは、両親にきちんと話をしなければならないと解っているはずなのに、古庄が行動を起こさない…というより、頑なに拒んでいる風なのは、何か理由があるのでは…? そう思い始めて真琴は、古庄の秘密を勝手に覗き見してしまうような、とてもいけないことをしている気持ちになってきた。 そんな気持ちを反映して、その足取りも重くなってくる。 古庄に何も告げずこんな所へ来てしまって、古庄は怒るだろうか…。それとも、信用を置けない奴だと、愛想を尽かされるかもしれない…。 それに何より、古庄がいないのに彼の実家に行くなんて、なんて心細いことだろう。 もしかして…、一人で乗り込んで「和彦さんと結婚しました」なんて言っても、それこそ信用されないのではないだろうか。 古庄のあの完璧な容貌だったら、これまでにもそんなストーカーまがいの勘違い女がいたっておかしくない。 悶々とした思考は、更に真琴の足を鈍らせて、とうとう前に一歩も踏み出せなくなってしまった。
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