舌打ちの意味

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自分の家族と楽しそうにしている真琴を見ると、古庄も和んだ気持ちになってくる。自分の家族に対してこんな気持ちになったのも、古庄の記憶にはないほど、遠い過去のことだった。 穏やかで楽しい朝食が済んだ頃、晶が財布から一万円を取り出し、母親に渡す。 「母さん。それじゃ、これ。約束のもの」 「ああ!そうね。お父さんも、忘れないうちに下さいよ。一万円」 「ああ、…うん」 目の前でそんなやり取りがなされて、真琴の目には何気なく映ったけれども、古庄は眉間に皺を寄せて、不穏な顔つきになった。 「……今度は、何を賭けたんだよ?」 「さあ?何だったかしらね~」 古庄からの詰問に、母親は相変わらずの態度でかわそうとする。 この家族たちは、古庄のラグビーの試合の結果や大学試験などの合否、30歳までに結婚するか…などなど、何かにつけ事あるごとに、古庄をネタに賭け事を繰り返していた。 母親の態度の反面、古庄に対して恐れることのない晶は、ありのままを暴露する。 「お前が前の結婚を止めた時に、お前は『ホモなんじゃないか』っていう疑惑が出て、ホモかそうじゃないかを賭けてたんだ。真琴ちゃんと結婚したってことで、『ホモじゃない』って結果が出たってことだな」 「…ってことは、親父も姉貴も、俺がホモだって思ってたってことか?」
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