稲刈り

3/7
前へ
/100ページ
次へ
「昨日の田やここの田は、できるだけ『自然農』のやり方で作ってみてるんだ。本当は田植えも稲刈りも機械を使わないで、手作業でやりたいんだけど、家族経営じゃそこまで手が回らない。だけど、農薬も肥料も一切使っていないんだよ。だから、稲熟するのも稲次第。温度や日照も田ごとに違うから、時期を見はからって、時期は遅くてもベストの時に収穫するのが一番おいしい米になるってことだ」 「へえぇ~~っ!!」 質問した当の古庄よりも、傍で聞いていた真琴の方が感心している。 「…お義姉さん…すごい。ホントに農業のプロなんですね…」 軽トラの荷台から、稲刈り用のバインダを降ろす晶を遠目に見ながら、真琴が古庄に耳打ちした。 「プロかどうか知らないけど、小さい頃から手伝ってきてるし、元農水省の官僚だからな。農業には思い入れがあるんだろ」 「……は?お義姉さん、霞が関の官僚だったんですか…?」 真琴が驚いた顔をして、晶から古庄へと視線を移す。その驚きに対して、古庄は眉を動かしてそれを肯定する。 「それも、タダの官僚じゃない。東大卒のキャリア官僚だったんだけど…、5年前に辞めて戻ってきたんだ」 「…はあ…」
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1186人が本棚に入れています
本棚に追加