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車がスローモーションで二人に近づく
今すぐ助けに駆け寄ろうとするのに、――足が固まって動かない
声を出そうにも、呼吸が止まったみたいに息が出来なくて
俺は歯を食いしばった。
また、だ
俺じゃない、誰かの命が、消えていく
俺が居なくなればいいのに、
どうして、なんだ
長い時間を駆け抜けた後の事は、ほとんど頭に残っていなかった
「――雅」
泣きじゃくる雅を抱き締めた佐伯は、何かを言うと、――そのままバタリと道に倒れた
「ママァ!ママア!」
佐伯の傍らで、雅が泣きじゃくる。
――フラッシュバックする
満里奈が死んだ、あの病室で。
俺が、逃げたあの日々が、
鮮明に、甦る
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