ある作家への取材

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「極上の美味…?」 復唱しないとわからない質問じゃないだろう…と思っている。 「君のような低能な人間に、私の舌に適う味を表現しうるのかね?」 「これは意なことを…頂いたお言葉をそのまま掲載いたしますので、読者には十分伝わるのではないかと」 にっこりと棘を差しながら言葉を返したがコイツには通用しないだろうな…と思っている。 「この私が一般人に教えると思うのかね?」 どうしてくれよう、この高飛車野郎!…と思っている。 「そうですねぇ…では先生が思われる極上の味とは、ご自身をどのような状態に導きますか?」 「ふむ…それくらいなら答えてやろう。それを食した途端、まず舌の上では辛味、甘味、酸味が軒を連ねる。ここで私は一度咀嚼を止める。すると更なる塩辛さが広がるのだ。それを堪能した後、よく噛み砕くとシャキシャキとした歯ごたえが胃の粘膜を刺激する。すると今度は甘味がじわりと溶け出して…」 理解できるのか?とか偉そうに上から目線だったわりには熱く語ってるじゃねぇか…と思っている。 「ああ…脳裏に蘇るあの味…まさに極上…いや究極!」 「して…先生。ずばりその食べ物とは?!」 「ママンの手作りキムチぃぃぃ!!!」 は…?と思っている。 「ま…ママン…?」 「あ…まあ…あれだよ君。母の味はやはり私にとって一番の美味、ということだ」 取り繕ってももうおせーよ…と思っている。 「そうですね。本日はありがとうございました。せ・ん・せ・い」 fin
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