18人が本棚に入れています
本棚に追加
まさか自分にこんな事が起きるなんて。こんな、嬉しいのに泣きたくなるような不思議な気持ちを知るなんて。
「もうさ、入学式の時から話す度にドキドキしっぱなし。明るくて元気なお前を……」
「そ、蒼汰くん、あたし……」
「──蒼汰ぁ? ナニやってんの、遅刻するおー」
下駄箱の陰からヌッと現れたのは大きなお腹、続いてその上に乗っかった色白ぽっちゃり顔が覗く。
あたしと蒼汰くんは咄嗟にスウッ……とすれ違って、それぞれの目の前にある下駄箱に貼りついた。
「な、なんだよ双山、お前日直だから先に行くって……」
そうだよブタ山くん! なんで居るのーー!?
「むふぉふぉふぉ。俺じゃなくて日直は蒼汰だったー、途中で勘違いって気が付いて呼びに来たぉ。すずもー、早く教室行かないと遅刻するぉー」
「……マジかよ。ああもうっ!」
やけくそっぽい大股で、蒼汰くんが階段を二段飛ばしで上がって行き、その後をブタ山くんが意外にも軽やかにホイホイっとついていく。
あたしは半ば呆然とその後ろ姿を見送った……けれど、胸の中のトクトク音は鳴り続けている。
最初のコメントを投稿しよう!