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けど、今では大学に通って、数年前から大学院に進学するにあたって、バイトまで始めた。
ユキくんのお父さん、お母さんは、大学と大学院への進学はもちろんだけど、ユキくんが自分から何かを始め、そして続いているってことがすごく嬉しくてホッとしたらしい。
ユキくんが最近すごく充実してるっていうのはよくわかっていて、僕もそれは自分の事のように嬉しいんだけど、ちょっと不満もある。
ユキくんがどんなバイトをしてるか僕に教えてくれないんだ。
いつバイトに行ってるかもよくわからない。
僕がわからないってことは、やっぱり夜のなんかあやしいバイトなんじゃないかって思う。
夜のバイトにどんなのがあるのかもよくわからないけど、なんかエッチなお店とかでボーイとか…そんなの?
エッチなドレスのお姉さんが、お金持ちの人の膝に乗って、ユキくんは叱られて頭からお酒とかかけられて……。
そんなことでまた外に出るのが嫌になっちゃったら…。
隣を歩くユキくんの顔をチラッと見上げた。
すぐに僕が見てるのに気づいて、ニコっと口元が笑った。
シンプルな服装はスッキリしてるけど、こんなぼさぼさの頭で顔も良く見えなくて大学でちゃんと友だちとかできてるんだろうか。
前みたいにいつ行っても会えるってことは無いけど、友だちを家に連れてきたりしてるとこは見たことがない。
……心配だ。
僕はユキくんの腕にギュッとつかまった。
でも、ユキくんに僕より仲のいい友だちが出来たら……。
それはそれでイヤだって思っちゃう。
僕って心が狭いよね。
どんなにユキくんにいっぱい友だちが出来ても、一番大切なのは礼音だよって言って欲しい。
「礼音、どうした?」
ユキくんが僕の頭を撫でてくれた。
「もう一回なでて?」
じっと見上げると、ユキくんは立ち止まって僕の顔を覗き込んだ。
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