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高校の教室で、頬杖をついてボーッと黒板を見つめ、ため息が止まらない。 どうしちゃったんだろう。 昨日までは、しおりを手に中村さんのことばかり考えてたのに……。 しおりをなくしただけで、恋心まで無くしてしまったみたいだ。 「礼音(れおん)、今日もボーッとしてるな」 「なんだよそれ、いつも僕がボーッとしてるみたいに」 「ははっ。なんだよそれ、いつもボーッとしてないみたいに」 山縣金剛(やまがた だいや)は、小さい頃からの悪友だ。 昔は僕の方が大きかったのに、中学に入ってすぐに僕より頭一つ分大きくなって、それからずっと追いつけない。 僕は高校三年になっても、いつも中学生と間違えられてる。 「なあ礼音コレ知ってる?」 金剛(だいや)が僕の耳にイヤホンを差し込んできた。 そこから流れてきた音楽は…。 「もちろん!僕、大好きだ!」 それは少し前からネットで話題になっていて、最近メジャーでもデビューしたミュージシャン「十-クルス-」の曲だった。 ネットを中心に活動してたから、顔出しはしてないけど、自作のPVも超オシャレ。 僕はもう、本当に毎日聴いていた。 「あれ、礼音がこういうの聴くなんて意外だな。じゃ、顔出ししたって、知ってる?」 「えっっ!えええ!?ウソっ!」 「見る?」 そう言って金剛がスマホ画面を僕に向けきた。 「見ない」 僕は横を向いて両手で目を隠した。 「え、なんでだよ」 金剛がスマホと顔をグイッグイッと近づけてくる。
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