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今までのイメージってのがあるだろ。僕、『十-クルス-』の音楽が本当に好きだから、ちょっと心の準備が必要なんだよ」
「えー。でも、見なくて本当いいの?」
「いい。」
金剛が僕の肩をガシッと抱いて、しつこく見せてこようとする。
そのスマホを持つ手をグイッと押し返した。
「んー。結構可愛いぞ?」
「…えっ!?可愛いの?」
僕の中では顔はともかく、シンプルでスマートな男の人ってイメージだった。
可愛いというのが意外すぎてパッと金剛の顔を見た。
ち、近いよ!
けど、金剛の手のスマホ画面は見ないんだからな!
「そ、その可愛い…だけ?他、どんな感じ?」
「んー。髪は柔らかそうでほっぺも柔らかそう…かな?」
「太ってるってこと?」
「太ってはないよ。むしろ細いくらい。だけど、ほっぺたはプクプクしてて可愛い。つまみたくなる」
「え…そんな可愛いの?」
大人っぽいイメージだったから、意外だ。
イメージと違いすぎだから、絶対見ない方がいい。
頭ではそう思うのに、興味が抑えられなくって、横目でチラリと画面を見てしまった。
あ、本当、若い。
っていうか、子供…?
っていうか……。
「もう!これ、僕の写真じゃないか!」
そこに映ってたのは、僕がハンバーガーにかぶりついてる写真だった。
「ははっ。可愛いだろ?ほっぺたプクプクでつまみたくなる。」
「もう!金剛のバカ!」
「本当はこっち」
不意打ちで目の前に掲げられた画面を、僕はシッカリ、ハッキリ見てしまった。
びっくりして、胸がすごくドキドキしてる。
「ああ!もう見ないって言ったのに!」
「でも、見たかったんだろ?」
画面に映っていた『十-クルス-』は想像通りシンプルでクールでカッコよくて…でも…。
「これ、本当に『十-クルス-』?」
「ああ、今度は本物。なに、イメージと違った?」
「イメージはぴったりだけど、その……」
「なに?」
「ちょっと、かっこよすぎない?」
僕の言葉に金剛がプッと吹き出した。
「覆面から、今度はゴーストに…って?確かにカッコいいけど、そこまでするかな?」
「それに…その…」
「それに、なに?」
まだ、胸のドキドキがおさまらない。
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