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貨物列車
線路が見える位置に住んでいるせいか、貨物列車が通るのを何度となく見てきた。
昔はコンテナも結構あったけれど、宅配サービスが充実したせいで、一時期コンテナはかなり減った。
でも最近は鉄道会社の方も色んなサービスが向上したため、コンテナもまた増えつつある。
その中に時々、変わったコンテナを見かける時がある。
鉄道会社のロゴも他の会社のロゴもない、真っ黒なコンテナ。前の方にどれだけ空きがあっても、それが積まれているのは必ず最後尾で、他のコンテナとの間には必ず一個分以上のスペースが設けられている。
そういえば一度、家からでなく、線路のごく近くでそのコンテナが詰まれた貨物列車の通過を見たことがあったっけた。
横を列車が通った途端、冷水を浴びせられたように背筋が冷たくなったのを、今でもはっきり覚えている。
あの体験が衝撃的で、黒いコンテナの中身知りたいと思い、鉄道会社に問い合わせたこともあったっけ。当然、積み荷のことを教えてもらえる訳もなく、はぐらかされて電話を切られたけど。
でもその後、あることに気づいて、俺はコンテナの中身が何であるかを知ろうとするのはやめたんだ。
俺の暮らす小さな田舎町。基本的にはのどかで平和だけれど、たまには物騒な事件も起きるし、交通事故なんかもある。
そういった、事故や事件で人が死んだ日なんだ。あの黒いコンテナを載せた貨物列車が走るのは。
関連があるかどうかは判らないけれど、やたらと嫌な予感がして、俺はコンテナの中身が何であるかを知ろうとするのをやめた。
…今日も自宅からは、微かな音を立てては知る貨物列車が見える。その最後尾に積まれているのは真っ黒なコンテナだ。
多分明日の新聞には、事故か事件か知らないけれど、何かしらの訃報が載っていることだろう。
貨物列車…完
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