贈り物

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 机の引き出しから銀色のシャープペンシルを取り出した。  それは私が高校生の時に使っていた物で薄く手垢で黒ずんでいた。  そして一番下の引き出しから布の袋を取り出した。  袋からシャープペンシルを取り出した。  カズヤからもらった物だ。  私が使っていた物より細く大して高価ではないそれは今でも新品のように銀色に輝いていた。  暫く眺めて袋に入れたが何かの拍子に私のシャープペンシルが床に落ちてしまった。  しゃがんでそれを拾った時、私の頭の中にある情景が浮かんだ。  カズヤが死んで部屋に籠っていた頃に玄関の方から話し声が聞こえた。  「…カズヤがプレゼントをもらったと喜んでいまして…」  「まあ、うちの子がそんな事を…」  急に思い出したせいか私は暫くしゃがんだ姿勢のまま固まった。  (俺がカズヤにプレゼント?何をやったのだろう)  頭の中であの頃の記憶を辿り始めた。  一時期は忘れようとしていたのに意外と覚えているものだ。  (焼きそばパンおごったな。でもその前にカレーパンもらったか。じゃんけんで負けてジュースおごったな、食い物ばっかりだ)  私は思わず苦笑した。  一つを思い出すとそれに紐づくようにまた一つ記憶が掘り起こされていく。  まるで宝探しのような気分になって若い感情が湧いてきた。  しかし肝心の事がまだ浮かばなかった。  (高い物じゃないな。文房具か、それともおもちゃか。おもちゃ?)  私は思わずあっと声を上げた。そして押入れから段ボール箱を引っ張り出してそれを探し出した。  カプセルに入ったおもちゃだ。
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