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「みなさーん、お絵かきの時間ですよー、今日は『おやすみ』と聞いて感じた絵を描きましょう」
彼女は幼稚園の先生だ。まだ若く明るい性格が子供達にも人気だ。
園児の一人が、
「チエちゃんは何書くの?」、と隣の園児に話しかける。
「えっとね、家で飼ってる犬のベス、いつも寝るときにおやすみって言うの。エリちゃんは?」
自分の画用紙から目を離さず、クレヨンを必死に動かしている。
「私はね、お父さん」
エリも黒のクレヨンを画用紙に走らせていた。
「ふぅーん」、他人にはあまり関心がない子のようだ。
子供達を見て回っていた先生が二人の間に膝を落とした。
「チエちゃんは犬かな?、かわいいねー」
「うん! ベスにね、おやすみって言って寝るの」
「そおー、ベスも喜んでいるわね」
「うん!」、満面の笑みである。
「エリちゃんは……、これは何?」
「お父さん」
「お顔を洗っているのかな?」
そこにはカラフルなタオルで顔を洗っているような男性が描かれていた。
「ううん、昨日は暑かったからお母さんが濡れたタオルを顔にかけてあげてたの」
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