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「攻め視点でいくと、お尻を触るのは楽しいのかな。痴漢物で攻め視点だと受けの反応に興奮するのが多いだろ?それでいくと俺も何かしらの反応をしたほうがよかったのかな」
もしそうなら今朝の痴漢に対する俺の反応は正解だったことになる。いや、触るだけで満足なんだとしたらやはり失敗だろうか。
よく腕を掴んで駅員に突き出す話があるけど、実際はちょっとそれハードル高いよな。そんなことをして反撃されたり逆恨みされたらどうするんだ。
「俺的には反応して欲しいです。でも無反応ならエスカレートする気もします。BL的痴漢じゃない場合、ラブないっすから反応するのはヤバい…無反応もヤバいかも?あれ、待ってください。…千代田さん真面目な話、明日も痴漢されたらどうするんですか?」
やっぱり考えるよね。俺もそれ考えたくなくて今日は仕事に身が入らなかったんだ。
はあ、と息を吐き出し横がけした鞄から本を取り出す。紺野くんも少し遅れてリュックから本を取り出した。
「どうしようね」
本を交換して鞄へしまい、肩を落として立ち上がる。下りのエスカレーターに乗り、横目で視線を合わせる。
「違う車両だよね」
「ですね。時間ずらすとかですね」
うん。そうしよう。
紺野くんと会う日でよかった。一人で抱えるには軽くなく、同僚に話すには恥ずかしい。聞いてもらえるだけで気持ちが軽くなったかな。
姿勢を正し微かに笑うと、紺野くんも口元を緩めた。
駅ビルを出て、また来週といい背を向けた。
10/21
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