1:真四角な椅子

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長い沈黙のあと、紺野くんは額から手を離し伸びをした。 「女ですね。千代田さんこないだ借りたラノベ面白かったです。あとこれ」 リュックから三冊の本を取り出し、こちらに差し出す紺野くんに、俺も横がけしている鞄から本を取り出す。 「俺もこの本楽しかった。自分じゃ鬼畜系買わないから新鮮」 「千代田さん純愛好きですよね。俺は逆に純愛系は買わないから」 お互いに本を交換して立ち上がる。 「しかし告白かー。なんだかこう、甘酸っぱいものを感じる」 下りのエスカレーターに乗り、うんうんと頷く。青春だ。紺野くんならモテる。無表情だから学生の中では大人っぽい感じが出るだろうし。 「俺としては喫煙所とか、残業ってワードにエロスを感じますね。リーマンかけるリーマン。いいっすねー」 身長差があまりないので、視線がばっちり合う。お互いわずかに口元を緩め、駅ビルを出てから別れた。 また来週、駅ビルの本屋で紺野くんと語らおう。 こんな話に付き合ってくれる彼には感謝しかないな。 10/20
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