2:通勤電車

3/5
前へ
/213ページ
次へ
仕事帰りに駅ビルの7階にある本屋へ寄る。今日は特に買うものはなく、早々にエスカレーター横の真四角な赤い椅子へ座り込んだ。 スマフォでサイトをチェックし時間を潰す。小さくため息を吐き、スマフォを胸ポケットへ入れ辺りを見回した。タイミングよく深緑のブレザーを着た男子高校生が見えた。 黒髪の端正な顔立ちをした紺野くん。彼にはきっと眼鏡が似合うはずだ。 空いていた俺の横の白い椅子を、紺野くんは足でずらす。位置を確認し、座り込んでリュックを足の間へと降ろし俺を見た。 「珍しいですね、何も読んでないの」 「そうだね。実は今日痴漢にあったんだ。こう、さわさわっと、尻を触られたんだが痴漢と言うには微妙で無視していたんだけどね。あれは今考えると手の甲で触れ様子を伺っていたんじゃないかと…降りる前の一駅分はかなり大胆に触られてしまったよ。あれだね、もうああなると何も言えないんだとよくわかった。俺の尻が魅力的だったのか大人しそうな奴だと侮られたのか考えていたんだけどさ、考えているうちにあの状態から挿入までする漫画では、前に座っている人から丸見えなんじゃないかと…見えるよね?」 膝の上で手を組み、正面に向けていた視線を紺野くんに向け尋ねる。紺野くんは腕を組んで目を閉じていた。 「見えますね。スカートならまだしもズボンっすよ。丸見えじゃないですか。けど痴漢物の場合出口付近やつなぎ目付近が王道だと思うんですが…。それより千代田さんがお尻触られて気持ちよかったのかが気になってしょうがないです」
/213ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2174人が本棚に入れています
本棚に追加