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「プロの暗殺者ならば、受け持った仕事は何よりも優先するものです。例え肥溜めに身を沈めようと、娼婦に身を落とそうと、必ずターゲットを殺害する。それでこそ、プロの暗殺者というものです。あなたのようにくだらないプライドに縛られるような輩は、暗殺者に変な理想を描く素人です。あなたは暗殺者に向いていませんよ、ミナリー」
「うっ……」
「どうやら、王が申された通り何者かによって暗殺者へと仕立て上げられたようですね」
アリスは額に手を当て、やれやれと溜息を吐く。その時だった。
「そうだと思ったよ、ったく……」
頭を掻きながら、男の人が地下牢の中へと入って来る。
蝋燭の灯りが照らし出したのは、どこにでも居そうな冴えない顔だった。
やや癖のある黒髪で、顔立ちは整っており、イケメンかブサイクかと言えば、ギリギリでイケメンに分類されそうな顔をしている。
けれど、顔に特徴はあまりなく、しいて言えば優男のようだとしか言えない。
背はそれなりに高い方だけど、体の線が細いせいか威圧感が全然ない。
むしろ弱弱しくも見えて、何だか頼り甲斐がなさそうな人だった。
服装も良質な生地は使っていそうだけど、至って普通の格好だ。
王都を歩いていれば、何度も似たような格好の人に出逢えるだろう。
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