第三話:村娘、出会う

4/4
前へ
/219ページ
次へ
 そんな感じの、どこにでも居そうな男の人に対して、アリス・アリアスがうやうやしく一礼をする。  彼女にそのような態度を取らせられる人間は、この国に一人しか居ない。 「ご足労頂きありがとうございます、我が王」  シュテイン王国の国王。わたしが、暗殺しようとした人だ。  名前は……えーっと、何だっけ? 「こんな薄汚い地下牢まで申し訳ございません」 「気にするな、アリス。それで、彼女が俺を殺そうとした暗殺者か?」 「ええ。名はミナリー・ミナーセ。十六歳の、どこにでも居る村娘です」  王様はふむと頷いて、わたしの前に立つ。 「俺の名前はシュード・シュテインだ。この国の王をやっている」  へぇー、王様の名前ってシュードって言うんだ。初めて知ったかもしれない。 「我が王。自己紹介なさらずとも、いくら村娘とはいえ王の名はさすがに知っているかと。ましてや、彼女は貴方様を殺そうとしたわけですし」 「あ、それもそうか。さすがに暗殺者までが俺の名前を知らないなんてわけが――」 「ごめん、知りませんでした」 「「……………………………………………………………………………………………………」」
/219ページ

最初のコメントを投稿しよう!

57人が本棚に入れています
本棚に追加