第四話:村娘、交渉する

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第四話:村娘、交渉する

「ははっ……。そうだよな……、どうせ俺のことなんて、誰も知らないよな…………」  王様は乾いた笑いを漏らして、虚ろな目で近くの壁に『の』の字を書き始めた。 「ああっ! 我が王、お気を確かに! 大丈夫です! 国民はみな王のことを知っております! この村娘が知らなかっただけです!」 「え、わたしだけ知らないってことはないと思うけど。村でも王都でも、王様の名前なんて一切聞いたことなかったし。アリスの名前なら、いくらでも耳にしたことはあったけど」 「あなたは少し黙っていなさいッ!!」 「あっ、はい」  アリスに恐ろしい剣幕で怒鳴られ、わたしは素直に口をつぐむことにした。  しばらくボーっと待っていると、王様が再びわたしの前に立った。どうやらアリスの必死のフォローで立ち直ったらしい。  王様は「ごほんごほん」と何度か咳払いをして、わたしに訊ねる。 「ミナリー・ミナーセだったな?」 「あ、うん」  普通に話しかけられ、わたしはついつい普通に返事をしてしまった。  そのおかげでアリスから思いっきり物凄く睨まれる。
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